こんにちは 大川 由貴(おおかわ ゆき)です!
初めてブログをご覧になる方は、ぜひ 自己紹介 もご覧ください。


今回は普段行っているレタッチ方法について、どこを気を付けながら修正しているのか大まかな流れをご紹介します。
細かいやり方やフォトショップの機能紹介についてはリクエストあればほかの記事にてご紹介いたします。

 

レタッチの是非や好みは人それぞれあるかとは思いますが…

今回はモデルさんの個性を残すというより、理論に基づいて美しく仕上げる方法をご紹介します。
アーチスティックなガラッと色味や雰囲気を変える方法ではないのですが、覚えておくとどんな写真でも使える美の理論やバランスのとり方などご紹介するので、アートワークにお役立ていただけたら嬉しいです。

 

ゴールデンバランスとeライン

人物レタッチにおいて、むやみやたらに目を大きくしたり、輪郭を削ってもあまり美しくなりません。大事なのはバランスです。
バランスを考えるとき、エステや整形、ヘアメイク業界において美の基準とされている『ゴールデンバランス』『eライン』という考えを目安にしています。

 
詳しくは『ゴールデンバランス』や『eライン』で検索していただけると学べるページがたくさんヒットしますので、そちらも併せてご参考ください。

 

 

 

『ゴールデンバランス』は、顔には『ゴールデンプロポーション』という黄金比率があるという考え方です。
具体的には「目の幅は、黒目の3個分くらい」とか、「唇の厚みは上下で1:1.3~1.5」などパーツごとに目安となる比率があり、この比率に近づけてあげるとバランスの取れた理想的なパーツ配置となります。

 
写真の場合は、ヘアメイクやカメラアングル、ポージングなどでも近づけることが出来ますが、レタッチで更に微調整してあげるとぐっと美人さんになります。
ただし、あまりガチガチにこの理論通りに修正してしまうと個性のない顔になってしまいます。

 
個人的な経験ですが、モデルさんがコンプレックスに感じているパーツや悪目立ちしているパーツは理論に沿って修正してあげて、
モデルさんのチャームポイントは多少理論から外れていたとしてもそのままにしてあげると、個性を潰しすぎず美しく仕上がるので喜ばれることが多いです。

 
ご自身の作風やモデルさんの好み、写真の使用用途等に合わせてレタッチしてみてください。

 

『eライン』はエステティックラインの略で横から見たときに、鼻先、唇先、顎先が一直線上に並ぶと美しいという考え方です。

こちらも、撮影時に顔の角度やアングルに気を付ければ綺麗な「eライン」が作れますが、必要に応じてレタッチします。

 
真横だけでなく、斜めから見たときや正面から見た時もこのラインが一直線だと美しく見えます。

 
日本人含むアジア人の場合は、鼻が低かったり顎がなく、唇が突出しているケースが多いので、ゆがみツールで鼻を高くしたり、顎を出してあげるとバランスがとれます。
男性の場合は顎が出すぎていたり、ハーフモデルさんやインターナショナル(海外)モデルさんは鼻が高すぎるケースがあるのでその場合は抑えてあげるとバランスがとれます。

 
eラインと併せて鼻筋がまっすぐだと更に美しく見えるので、かぎ鼻さんなど鼻筋が曲がっているタイプはハイライトで整えるか、ゆがみツールで変形します。

 

肌の色について

ポートレート撮影において肌の色は重要です。

顔をはじめとする面積が大きいパーツなのでよく写りやすいです。顔は特に誘目性が高いパーツなのでモデルさんの印象を大きく左右します。

肌の色味に正解はないとは思いますが…
最近のトレンドは、商業写真館でも「美肌加工サービス」(肌荒れをぼかして明るく補正してくれるサービス)といったオプションが設けられているくらいなので「美白肌」が人気だと思います。


多くの女性がコスメなどの広告に載っている「色白」「美白」「陶器肌」「光り輝くような肌」といったキャッチコピーからイメージされる、白くてスベスベで、透明感のある明るい肌を好む傾向が強いと思います。


基本的には清潔感や女性らしい柔らかさ、やさしさなどが表現しやすい肌色です。男性の場合でも肌を明るくすると爽やかさが出ます。
女性に喜んでもらいたいなら明るめな肌に仕上げるのがおススメです。私もよっぽどの理由がない限り、美肌に仕上げます。

 

一方、「色黒」「小麦肌」「日焼け肌」など健康的に見える肌を好む方もいらっしゃいます。色みが強くはっきりした肌色です。
力強くかっこよく見えたり、グラビア誌等に多いリアルで官能的な肌色かと思います。また、ノスタルジックな雰囲気の作品に仕上げたいなら、こちらのほうがマッチすることもあるかと思います。

 

美白肌の仕上げ方はいろいろありますが…
アドビのライトルーム等を使うなら、オレンジや黄色の輝度を上げます。これだけでも白さや明るさが出ます。

 
フォトショップならトーンカーブで調整する方法もあります。

 
写真全体の色温度や明度を変えて青白っぽい色に変えても肌の透明感が出るので、写真のテイストに合わせて補正します。(肌だけ青みを加えたり、明度を変更したい場合などはマスクをかけるなど調整してください。)

 
ただし、もともと色白な子(特にパーソナルカラーで言うところのウィンタータイプ)はあまり白すぎたり、青みを加えすぎると青白すぎて病人っぽくなってしまいますので加減に注意してください。

 
青い血管が浮き出やすいモデルや、目の下の青クマが強いモデルなども青みを強くすると余計目立って怖くなってしまうので、マスクで部分的に補正したり、血管やクマを修正ツールなどで消してあげます。

 

また、ハイライト(頬の高いところなど、光がよくあたるところ)からシャドウ(フェイスランなど)にかけての階調が綺麗だと整ったスベスベの肌になるので修正ツールで余計な凸凹間を取り除いたり、混合ブラシツールでなだらかに整えてあげます。
階調はジグザグにトーンカーブを動かすと見えやすくなります。

 

トーンカーブを使用した肌レタッチの例

 

トーンカーブがよくわからないという人は、プロのレタッチャーのサイトや本などを参考にしてみるのがおススメです。

 

レタッチャー / 大谷キミト さんのnote

こちらのnoteで勉強させていただいてます。

 

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大谷さんは本も出版されています。

 

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2011年に発売された本なので、ちょっと古いですが… ゆきたそはこちらの本でレタッチを学びました。

 

肌が綺麗なだけでプロっぽい美しい写真に仕上がることが多いので、肌レタッチは習得しておくと便利です。

 

顔のレタッチについて

顔のレタッチの際はまずモデルさんをよく観察します。

 
どこを直すとよりバランス良くなるのか各パーツごとにチェックします。(例えば、ゆきたその場合は、目の大きさが左右均等でないとか、アップノーズ(いわゆるブタ鼻)が気になるとか…)

 

今回はフリー素材のこちらの写真を使います。

目鼻立ちはっきりした美人さんですが、先ほどのゴールデンバランスを参考にしながらレタッチするとこんな感じです。

 

 

レクチャー用なのでしっかりめにレタッチしています。
もっとナチュラルめが好みの方なら、特徴的なパーツ(今回なら目元・鼻・顎)はそのままにしたほうが個性が出ます。

 

1.目のバランスを整える
手前側の目(右目)が小さいモデルさんなので、ゆがみツールで右目のみ大きくしました。また、充血も混合ブラシツールで消し、トーンカーブで両目とも白目の明度を挙げています。白目が濁りなく、明るくなると目がキラキラ光って見えるので可愛らしさが増します。

 

2.ゆがみツールで各パーツの大きさ変更
鼻の幅を狭く、口の大きさを小さく変更しました。また、顎が無かったので出して、フェイスラインを引き締めることで小顔にしています。

 

3.髪やほくろを消す
髪のかかり具合によってはアーティスティックに見えたり、おくれ毛は髪の軽さや風を表現してくれるので必ずしも消す必要はありませんが、
髪が目に入っていたり、唇にくっついてる場合などは修正ツールやスタンプツールで消します。

おくれ毛も多すぎるとぼさぼさな髪に見えるので、風の動きや背景とのバランス等に合わせて余分なところは消します。

 

ほくろは消すかどうか好みが分かれるかとは思います。
モデルの身体的な特徴として残す場合(証明写真や宣材写真など)もありますし、作品性や世界観優先でノイズに見えるなら消してもいいかと思います。

 

4.ハイライトを増やす
今回は明るい雰囲気の写真だったので、頬や鼻、筋など(顔の出っ張っているところ)に少しハイライトを足しました。
肌は明るいところが増える程フレッシュな質感に仕上がります。
逆にダークな雰囲気や、かっこいい雰囲気にしたい場合はフェイスラインや目元などにシャドウを足す場合もあります。

 

5.ほうれい線を消す
完全に消してしまうと不自然ですが、ほうれい線があると老けて見えがちです。特に口角を上げるとくっきりと浮かび上がってくるので、スタンプツールや混合ブラシツールで薄くします。

 

6.肌を整える
今回の写真は特に問題がありませんでしたが、ニキビやそばかす、シミやしわ、クマや虫刺され跡、小傷やムダ毛の剃り忘れなど肌トラブルは意図がない限り修正ツールで消します。

 
特に高解像度の写真や顔のアップの写真は産毛や鼻先の毛穴まで見えるので、気になる場合は消します。
(衣装や手先もよく見て、ネックレスが回っていたり、下着が見えていたり、たたみジワが残っていたり、糸が出ていたり、ストッキングが伝線していたり、靴に泥がついていたり、ネイルが剥げていたり…などがないか細かくチェックします。背景も余計なものが写り込んでいないか確認します。)

 
質感を残したい場合やマットに仕上げたい場合はスタンプツールで、少しつやっとしたフレッシュな肌に仕上げたい場合は混合ブラシツールですこしずつぼかしながら肌の階調を整えます。

 

 

全身のレタッチについて


全身をレタッチする場合は、スタイルの良さが重要です。

こちらのフリー素材を顔を修正せずにレタッチをしました。

 

 

 

股下比率と「クビ」パーツ

スタイルの良さの目安は股下比率を参考にしています。

また「クビ」とつくパーツ(首・手首・足首・くびれ(ウエスト))が細く見えるとスタイルよく見えます。

このテクニックは、アパレル販売員時代からよく使っていました。撮影時のスタイリングでも、レタッチでも使える知識かなと思います。

 

股下比率を高くする

股下比率とは

身長に対してどのくらい脚の比率があるのかを示した数字です。

股下比率(%)=股下( 脚の付け根から床面までの垂直距離 )÷身長×100

で求めることが出来ます。



日本人の平均はおおよそ 44%~46% と言われています。

おもわず「脚長いね」と言ってしまいたくなるような、スタイルのいいモデルさんだと 50% 前後あるかと思います。

 

ちなみに、世界で一番脚が長い人でギネスブックに認定された アドリアナ・カランブーさん は 53.4% だそうです。

 

股下比率はヒールを履くことで高くすることができます。

 

例)

身長160㎝、股下が73.6㎝(平均的な体型)の方だと 73.6 ÷ 160 × 100 = 46%

もしこの方が7㎝ヒール(スタンダードな高さ)を履いたら 80.6 ÷ 167 × 100 ≒ 48%

約2%高くすることができました。

 

もっと比率を高くしたい場合は、より高いヒールを履かせることも出来ますが…

全体のスタイリングが崩れたり、モデルさんの負担になってしまう場合はレタッチで長くします。

背景によりますが、選択ツール等で脚を選択し伸ばします。

 

今回の例の様な、足元が隠れている衣装だったとしても伸ばしてあげるとスタイル良くなります。

 

ただし、やり過ぎは禁物で、長くなりすぎても不自然なのでだいたい50~52%

アングルやポーズにもよりますが、長くて55%以内が自然かなと思います。

 

写真によっては、脚の長さに合わせて腕もバランスよくなるように、長く調整します。

 

「クビ」パーツを細く見せる

「クビ」パーツは相対的に細く見せることが出来ます。

例えば、ボリュームのあるスカートだとくびれが強調されたり、袖口の大きい服のほうが手首が華奢に見えます。

 

くびれの強調や華奢見せの例

 

長い丈(10分丈)で隠すより7分丈のパンツなど、クビパーツを見せたほうが女性らしい細くて華奢な感じを出せます。

 

『「クビ」パーツを見せて、近くの物のボリュームを出す

とスタイルが良くなります。

 

このテクニックは顔回りにも応用できます。

髪のボリューム出したり、髪飾りを大きなものを使うことで小顔効果が得られます。

 

レタッチで細くする。

レタッチで更にスタイルよく見せたい場合は、「クビ」パーツをゆがみツールで細くします。

ウエストや手首の隠れていないポーズの写真をセレクトすると、レタッチしやすくなります。

 

また、スカートを選択ツールなどで大きくしたり、髪にボリュームを持たせて調整します。

柄の入った衣装の場合は変形しすぎて不自然にならないように気を付けます。

 

更に小柄で華奢な感じを出したいときは、指を細くしたり、肩幅を狭くすることもあります。

 

 

レタッチの仕方は人それぞれかと思いますが、目安になる数値やバランスがあると迷いが少なくなるので作業効率が上がります。

 

また、ブレがなくなるので安定したクオリティのレタッチができるようになってくると思います。

皆様のレタッチに、こちらの記事が参考になりましたら幸いです。

 

 

最後までご覧いただき、ありがとうございました。
ご感想やご質問など、コメントやSNSでいただけたら嬉しいです。
twitter @yuki931206

大川 由貴(Okawa Yuki)

10歳から手芸や縫製に興味をもち、パタンナーを志望する。高校卒業後は服飾系の専門学校に進学し4年間、服作りについて学ぶ。卒業後は正社員としてアパレルメーカーに就職するも、ファインアート・フォトグラフィーの世界に出会い、フリーの衣装デザイナーへと転身する。衣装制作だけでなく、カメラマン、アシスタント、モデル、子ども写真館の契約社員等、積極的に撮影現場に入りスチール撮影について学ぶ。多岐にわたる経験を活かして、 共同経営で 写真スタジオを開業する。
CGイラストやフォトレタッチにも興味をもち、現在独学で勉強中。

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