2023/12/07~2023/12/12まで
都内で初の個展を開催させていただきました。
個展の詳細については過去の記事もご覧いただけたらと思います。
こちらのページでは会場でお話しさせていただいた作品解説を掲載しております。
時間の都合で会場では省略させていただいた作品の解説や、ブログ用に加筆させていただいた作品の解説を載せておりますので、会場で作品解説を聞いてくださった方も楽しんでいただけるのではと思っています。
長い解説ではございますが、ご覧いただけたら幸いです。
タイトル『プロローグ』
12月の展示、それも会場の入り口付近でお客様が初めに目に留まりやすい位置に季節外れの浴衣の作品を置かせていただきました。
そして前置き(プロローグ)という意味のタイトルをつけて展示させていただきました。
本来、この浴衣の写真はオンラインショップなどを宣伝するために撮影した広告写真です。
なので、「作品」として展示するにはあまりふさわしい作品ではないのです。
なのに、なぜこの作品に「プロローグ」というタイトルを付け展示したのか。
実はこの作品、昨年も同じ会場で展示していただいております。
連日私の個展スタッフとして頑張ってくださっった柏野 美沙(かしの みさ)さんも昨年10月この会場で初の個展を開催されました。
私にとって彼女はかつて同じ職場で働いていた後輩でもあります。
彼女なりに工夫を凝らしたその個展が私は好きでした。
著名な方や数多く展示されている方の展示と違って、決して大きな展示でも、洗練された展示でも無かったかもしれません。
しかし、来てくれた人を楽しませる為に工夫を凝らし、彼女の強みを活かした展示内容や接客が私は好きでした。
本来、私はあまり個展などイベントを主催したい性格ではありません。
個展なんて一生やらなくてもいいのではないかとも考えていました。
しかし、彼女の個展に感化され、私も今まで積み上げてきたことで色んな人を楽しませることができるなら個展開催に挑戦するべきではないかと思いました。
柏野さんの個展が無ければ、私は私の個展を開催しなかったかもしれない。
だからこそ私の個展を開催するきっかけとなった彼女との作品を一番初めに展示したいと思いました。
そして、そう思わせてくれた彼女と同じ会場で、私も個展をしたいと思いました。
また、彼女が着ている浴衣の柄(花群生紋様)も私がテキスタイルデザイナーとして活動し始めたばかりの頃、一番最初に発表した作品です。
このつまみ細工柄の生地はリアルファブリックという布生地に好きな柄をプリントできる会社様で、3年ほど前から販売しております。
3年間の間で、沢山のお客様にご利用いただきました。
お客様の元で、私では作れないような作品が生まれ、そこからそれをプレゼントしたり、イベント販売で喜んでいただけたなどのお話もたくさん届いております。
初めは私の頭の中にしか無かったアイデアを、誰でも使えるような形で世に出して、そこから沢山のエピソードが生まれる物作りの楽しさを感じています。
今回の個展では、長らく当店のつまみ細工柄をご愛好いただいている、ハンドメイド作家様やメーカー様にもご協力いただき、沢山の作品を展示・販売していただきました。
会場では私のデザインを、様々なアイデアと技術で素敵な形にしてくださったハンドメイド作品もお楽しみいただけたのではないかと思います。
あの浴衣の写真を撮らなければ、そしてその写真を柏野さんが展示しなかったら、今回の個展は開催しなかったかもしれません。
私の個展を開催しなければ、会場でハンドメイド作家さんの作品との出会いもなかったかもしれません。
私の個展のきっかっけに、そして個展会場でお客様とハンドメイド作品を繋ぐきっかけにもなったこの作品を私の個展の「プロローグ」として一番はじめに展示・解説させていただきました。
お次は対になっている作品
「AIの仰せのままに」と「AIと心通わせて」の解説です。
タイトル「AIの仰せのままに」
まずはこちらグレーの背景の「AIの仰せのままに」から
こちらの作品の衣装、AIが数秒で生成した衣装デザインをそっくりそのまま形にしています。
こちらがその生成画像です。
AIが生成したものをそのまま形にしているので、デザインを考える時間はゼロ
自宅で撮っているからスタジオ代などお金もかかっていないし、私はいつものライティングやカメラ設定で、モデルの柏野さんもお得意のメイクやポージングでパパっと撮らせていただきました。
他の作品に比べるとすごく楽に、簡単に、撮らせていただいた一枚です。
昨年、美沙さんの個展の打ち上げの席でAIの話題になり、その時生成されたのがこのデザインです。
美沙さんがAIを使ったことが無いと聞いたのでちょっとしたお試しのつもりで、『ゴシックテイストで愛をテーマにしたドレス』をデザインしてほしいとAI頼みました。
(柏野さんは普段ゴシックファッションを愛用されているためこのオーダーにしました。)
「愛」なんて抽象的でデザインとして落とし込むのが難しいものを、いったいどんな形でAIは形にしてくれるのでしょうか?
ワクワクしながら生成開始のボタンを押したことを今でも覚えています。
胸元にハートマーク、けれどもハートの色が背景と同じでまるで心がからっぽに見えるデザインです。
「愛」をテーマにお願いしたのに「愛」が感じられません。
胸元にハートマーク、これ自体はデザイン習いたての学生さんでも思いつくような安直な愛の表現です。
AIにとっての「愛」はただの記号(ハートマーク)でしかないのかと少しがっかりしつつも、愛が理解できないからこそオーダーと真逆のデザインを生成したAIにすこし面白さも感じました。
そして、血の通っていないAIがこの心が無いドレスをデザインしたことが、なんだか皮肉めいて見えて、むしろこれで作品を撮りたいと思いました。
AIの技術って便利で素晴らしいと思うのです。
たったの数秒で面白い衣装をデザインしてくれるのでデザインにおける労力はほぼ0です。
デザインにかける時間が短縮される分、効率的でもあるでしょう。
AIが生成したデザインなので、仮に誰かに非難されたって傷つかずに済みます。
ちょっと勉強すれば誰でも使えて、
パッと見良い感じの生成画像を公開すれば沢山いいねがもらえて、
もしかするとそこからお金も稼げるかもしれない。
夢のような技術ですね。
…しかし、本当にそれでいいのでしょうか?
1年前、このデザインを生成した頃はまだAIを楽しく使う人がほとんどだったと思います。
しかし、たったの1年で、悪い使い方をする人がずいぶん増えたようにも感じます。
許可なく有名なイラストレーターさんの絵柄をそっくりそのままコピーしたり、引退されたアイドルさんのお顔を使って誤解を招く写真を生成したり…
いいねやお金が稼げるかもしれないけど、その裏で誰かが傷つくような 心無い使い方 をする人が出てきたことは残念に思います。
AIが悪いとは思いません。
誰かを幸せにするために使えるなら、むしろどんどん活用していく技術だと思っています。
そこでこちらの対となる「AIと心通わせて」という作品も作りました。
タイトル「AIと心通わせて」
AIが生成した衣装デザインを元に、モデルの美沙さんの好みや体格、ロケーションの性質に合わせて私がリデザイン(袖を足したり、スカートのボリュームを増やしたり、胸元のハートを赤く染めたり)しています。
メイクはあえてコスプレイヤーの方にお願いし、合わせるアクセサリーもハンドメイド作家さんの作品を使わせていただきました。
撮影場所も、こだわりの強いオーナーが手掛けている川口の創作系スタジオ「WHITE & GREIGE」さんを選びました。
正直、手間や時間や労力や、お金だってこちらの方が何倍もかかっていてます。
そして、時間やお金をかけたからって、こちらの作品が何倍も良い結果が出る保証はどこにもありません。
もしかすると、賢いAIはこういうかもしれません。
「ドレスの作品を撮るのなら、中性モデルを使うべきではなく女性モデルを使うべきだ」
「ヘアメイクはコスプレイヤーを起用すべきではない」
「同じ金額ならハンドメイドアクセサリーよりも既製品の方がコスパが良い」
「撮影場所はもっとライティングがコントロールしやすいスタジオの方が簡単だ」
確かにそうかもしれません。
結果を出すのであれば、AIの導き出したままに撮った方が良かったのかもしれません。
それでも、この作品においてはこのチームで撮りたいと思いました。
作品モデルの美沙さんは生まれは男性ですが、女性の格好で暮らしています。
かつてはその恰好が似合わないと言われたこともあるようですが、理想の自分を叶えるべく今でも努力を重ねられています。
コスプレイヤーさんやハンドメイド作家さんも、有名になれるから、楽に稼げるからと活動を始めたわけではありません。
憧れのキャラクターになりたくて一生懸命メイクを覚えたり、自分が本当に欲しいものを生み出すために技術を磨かれています。
撮影スタジオだって、採算とるならもっと他のやり方があると思います。それでも、インテリア好きのオーナーが試行錯誤しながら空間を作っています。
お金の為に、簡単に、物作りをすることが悪いわけではないのです。
作品ではなく経済活動のための「製品」ならむしろ、効率的で稼ぎやすいものが良いかもしれません。
けれども、作品作りにおいては、AIみたいになんだか自分より凄くて賢そうなものの言いなりになって、思考停止で手を動かすのはもったいないと思うのです。
作品を作るって楽なことばかりではないと思うし、むしろ痛みを伴うことも多いと思います。
それでも、せっかく人間に生まれたのなら、頭使って、心血注いで、「好き」の気持ちを込めて作った方が何倍も楽しいし、きっと価値があると思うのです。
これからの時代、AIを活用した物作りは増えていくかもしれないですが、心の奥底にある「好き」の気持ちは忘れないで活動したいと思います。
次の作品の解説です。『Collaboration with atelier Beatrice』と『Collaboration with 【Bisque Dolls】』
こちらも私にとっては2つ並べることに意味がある作品なので一緒に解説させてください。
タイトル『Collaboration with atelier Beatrice』
タイトルからもわかるように、ハンドメイドのヘッドドレスやアクセサリーを制作されている atelier Beatrice(アトリエ ベアトリーチェ)様とのコラボレーション作品です。
モデルである元帥 栞(げんすい しおり)さんが被っている日本髪風のヘッドドレスは atelier Beatrice 様と私のコラボ作品です。
(土台の髷(まげ)は atelier Beatrice 代表多瑠様制作・その上につまみ細工などで装飾を担当したのが私です。)
また、ヘアメイクは多瑠様がご担当くださり、掛下として着ている真っ赤な花群生紋様(つまみ細工のお花柄)のお着物は私が制作しております。
atelier Beatrice 代表の多瑠様は私が尊敬している作家様の1人です。
世界観がしっかりとされている華やかなアクセサリーを多数制作されています。
アクセサリー制作だけではなく、イベント出店や創作撮影プランの企画なども精力的にご活躍されている作家様です。
モデルの元帥さんは私と出合った頃はモデル活動やセルフポートレートなどで撮影業界でご活躍されていた女性です。
今は小さなお子さんがいて、以前よりお仕事や作品制作として活動は抑えめになっていますが、ご家族のお写真を撮ったり主婦として生活されております。
タイトル『Collaboration with 【Bisque Dolls】』
こちらは私の服飾系専門学生時代の友人 麗歌さんのアクセサリーブランド【Bisque Dolls】(ビスクドールズ)とのコラボレーション作品です。
麗歌さんは学生時代から優秀で素敵な作品を作られておりました。
彼女も今は小さなお子さんがいるので、育児や旦那様のお仕事のお手伝いの傍らアクセサリー制作をされています。
今回は、私の花群生紋様(つまみ細工のお花柄)のお着物に合わせて耳飾りやお帽子などのアクセサリーを制作していただきました。
モデルはロリータ界隈で有名なアパレルブランドのモデルなど務める 赤利 かえ さんとポートレート撮影界隈でご活躍の むらさき 様にお願いしました。
『Collaboration with atelier Beatrice』も『Collaboration with 【Bisque Dolls】』もアート作品というよりかは、アクセサリーや衣装にフォーカスをあてた広告写真のイメージで撮影しています。
そしてどちらの作品も意図的に、ご自身の活動に全力で、業界でご活躍中の女性(多瑠様や赤利さん、むらさき様)と、現在はご自身の活動は家事や育児の傍らに、家庭内でご活躍中の女性(元帥さんや麗歌さん)の組み合わせで撮影させていただきました。
ちょうど今の私くらいの年齢(今年30歳になりました。)だと、結婚や出産、子育てをきっかけにお仕事を少しセーブされる女性と、お仕事の幅が出てきてより業界でご活躍される女性に分かれやすい年代だと感じています。
家庭を築く生き方も、キャリアを築く生き方もどちらも素晴らしく美しい生き方だと思っています。
しかし、一方で人というのは立場の違う人たちとどうしても対立しやすい難しさも抱えているように感じています。
男性と女性、若者と年配者、部下と上司…
あげたらきりがないですが、自分とかけ離れた人たちの苦労や悩みは対岸の火事に感じ、恵まれている様子は隣の芝生が青く感じるかのごとく羨ましく思うのは人のさがかもしれません。
子供がいて育児や家事に専念する女性と、自分の好きな仕事に全力で打ち込める女性もそれぞれに苦労や悩みがあり、また幸せがあると思うのです。
私の母の話になりますが、母は私が生まれたせいで好きなことができないと嘆くことが多い女性でした。
私は母が若いころに授かり婚の長女として生まれています。
母からしてみれば、予定のなかった妊娠なので人生の計画を大きく変えざるおえなかったのでしょう。(そこで中絶を選択せずにいてくれたことは感謝しています。)
当時はまだ若い母なので仕事や遊びでやりたいことも沢山あったのだと思います。
それをすべて我慢して子育てに専念していることが、母にとっては苦痛である旨を私は物心ついた頃から、耳にタコができるくらい聞かされて育ちました。
そして、仕事に打ち込む、いわゆるバリキャリ女性と呼ばれるような人たちを、必要以上に羨ましがっていたことも覚えています。
そんな母の様子を見て思ったのです。
例え子どもがいたって好きなことは諦めない方が良いと。
子どもが小さいうちは時に、どうしても親が自分の好きなことはできないのが実情だと思います。
子育て以外にも好きなことが全力でできない事情(貧困や病気など)は色々あると思います。
けれども、ほんの少しでいいから好きなことには触れておいた方が良いと思うのです。
でないと自分より立場が弱いものに攻撃的になったり、自分の持っていないものを手にしている人たちに嫉妬してしまう可能性があると思うのです。
母も時間や精神的に余裕が出てきて、ビーズアクセサリー作りなど母がやりたいことをできる時間が持ててからは少し穏やかになりました。
母の時代は難しかったのかもしれませんが、現代は趣味でも発表や活動できる場(SNSやイベント)が増えたように思いますし、同じ趣味や価値観を持っている人とも繋がりやすい時代になったと思います。
今回の撮影では、微力かもしれませんが
全力で制作やモデル活動できる方も、それが難しい方もそれぞれが自分のペースと相手のペースを尊重しあって撮影できるように企画させていただきました。
今回撮影にご協力いただいたアクセサリー作家さん達もモデルさんたちもそれぞれに事情があって、きっと悩みもあるのだと思います。
けれども、立場の違う相手も尊重出来て、全員が無理や不満が無く自分の好きなこと(アクセサリー制作やモデル活動など)ができたらいいなと考えています。
なかなか難しいことかもしれませんが、私はこれからも色んな立場の人が活躍できる場を作っていきたいと思っております。
それでは、次の解説です。
これから解説する3枚の作品はいつもお世話になっているHASEO先生に撮っていただいたお写真で、今回特別に展示のご許可をいただいております。
(タイトルも解説も今回の個展の為に私が考えております。)
どれも撮影プランやウエディングの記念撮影として撮っていただいたものなので、本来はアート作品として展示したのはふさわしくないかもしれません。
それでも、この写真を展示して、伝えたい想いがあったので、ここからは自分語りが多くなるとは思いますが、どうか聞いていただけたらと思います。
タイトル「水を恐れしゲンゴロウ」
『君はまるで水を恐れているゲンゴロウのようだ』
ある尊敬している方から頂いたお言葉です。
ゲンゴロウとは水中昆虫で、空を飛んだり、陸に上がることもできるなかなか器用な昆虫です。
短期間であれば陸上でも飼育できますが、やはり、水の中でこそ本領を発揮でき、自由に泳いで長生きする昆虫です。
『君はまるで水を恐れているゲンゴロウのようだ』
この言葉の意味を、私は全てくみ取れてはいないかもしれませんが、きっともっと活躍できることを期待して言ってくださったのではないかと考えています。
なので、今回の個展では色んなことにも挑戦させていただきました。
私の性格上、人に頼んだり、協力を仰ぐのが苦手で、本音としてはなんでも自分一人で完結させたい癖があります。
モデルやヘアメイクさんを頼んで撮影するより、セルフ撮影や物撮りなど私一人で撮れる撮影の方が気が楽だし、ポップアップショップに参加しないかと作家様などに連絡することも気が重く私にとっては勇気が必要なことでした。
目立つこともは望まないし、有名になったり、お金持ちになりたい気持ちも薄いので、そもそもこうやって個展を開いたり、皆様の前でお話しさせていただいたことも、楽しいとか嬉しいというよりかは大変という気持ちが大きかったです。
それでも、いつもならやらないことをやってみて、沢山のことが見えてきました。
自分が思っているよりも多くの人が協力してくれたり応援してくれること、
私の作品を楽しみにしてくれる人がいること、
自分が活動すれば、それが大きな波紋となって色んな人の役にも立てること
まだまだ拙い泳ぎかとは思いますが、私らしく一所懸命に泳いでみたいと思うので、どうか今後の活動も見守っていただけたらと思います。
タイトル「間引き雛」
「間引き雛」とは私が考えた造語です。
一部の鳥類は育ちが悪く劣っている雛を母鳥が蹴落としてしまうことがあります。
かわいそうですがそれは鳥の社会において必要なことで、無くなることはないのです。
人間社会に置き換えても似たような面はあると思うのです。
劣っていて、いらないと判断されること
学校のいじめだったり、会社で気の合わない上司やクライアントから意地悪されたり
メディアやSNSで叩かれたり、親から虐待されたり
努力ではどうしようもないことで、理不尽な目にあわされる。
蹴落とす側には理由があるのだと思いますが、蹴落とされる側としてはたまったものではないですね。
私は人生において大きな挫折を2回経験しています。
1度目は生まれた瞬間、母親から女ならいらないと育児拒否をされたこと
2度目はインターン先で役立たずだからいらないと指導拒否をされたこと
先に言っておきますが、決して虐待やハラスメントを肯定するわけでもないのですが、どちらも今の私を作る為の糧になっています。
2度目の挫折の時は、仕事ができなくなるほどの病気になり家に籠ることになりました。
辛くはありましたが時間はあり、好きなことをした方が良いと当時のお医者様から言われていたので、体調の良い時は服やアクセサリーを作っていました。
その時、ふと思いついたのがつまみ細工の靴で、綺麗なものを見たいという気持ちだけで制作しました。
周りの評価を期待して作ったわけではないですが、出来上がったものは好評で、今でもいろんな人に楽しんでいただける作品になったかと思います。
巣から追い出された雛鳥のように、理不尽な目に合うことがあるかもしれません。
けれど追い出された雛鳥だって空へ羽ばたくための翼をもっています。
これからも理不尽な目に合うこともあるかもしれませんが、それでも私は私の翼を育てていきたいと思います。
タイトル「神様」
私からすればいつもお世話になっているお仕事仲間も、会場に足をお運びいただいたお客様も、そしてこのブログを読んでくださっているあなたも神様です。
が、それだとちょっと範囲が広いので、1人の神様に絞ってお話させてください。
その神様とは、ズバリ、私のことです。
子どもの頃、神様なんていないと思ったんです。
楽しいこともありましたが、それ以上に辛いことも多く、また、周りの友達も大変な子が多くて、自分も友達も救えないことに無力感を感じやすい子どもでした。
私のことを幸せにしてくれる神様なんていない。
だからこそ、大人になったら、私は私の為の神様になる。それが私の夢でした。
食べたい物も、行きたい場所も、やりたいことも、すべて大人になってから叶えたらいい。
未来を夢見る代わりに、目の前に広がる辛い現実から目を背けて、行動を続けてきました。
大人になった今、思うのです。
食べたい物も、行きたい場所も、やりたいことも、できるようになって
神様みたいな良い人たちに恵まれて今思うのは
辛い環境でも諦めないで行動し続けた子どもの頃の私がいるからだと。
(もちろん、今日まで支えてくださった人達のおかげでもあります。)
その上で、今の私だけが神様なのではなく、過去の私も神様だったと思うのです。
きっと誰だって自分の神様になれると思うのです。
もし、今幸せを感じられている人は過去に幸せに繋がる選択と行動を重ねてきた人だと思うのです。
そしてもし、今はあまり幸せを感じられない人だってこれからの選択と行動次第で自分の世界を変えることができると思うのです。
自分のことを神様だと思っているなんてと笑う人はいるかもしれません。
けれども、最後に自分を幸せにできるのはきっと自分だけなのだと思います。
家族や友人、恋人や推している人、仕事や趣味の仲間などは人生を彩る上で大切です。
彼らと幸せを共有してこそ人生は豊かに感じられるでしょう。
しかし彼らが必ずしも人生を幸せに導いてくれるのではないのです。
大切なことは自分で決めないといけない時が来るし、自分で行動しなければいけない時もあるでしょう。
応援してくれる人たちの気持ちを支えに、自分で選択と行動を決めていくのがきっと自分の神様になることなのだと思うのです。
暗いニュースも多い世の中だからこそ、やりたいことや好きなことを諦めないでほしいと思っています。
子どもが神様なんていないと絶望するような世界ではなく、だれでも希望をもって生きられる世界にしたい。
それが私の今の夢です。
今回の個展ではささやかではありますが、好きなこと(モデルやハンドメイド作家など)を頑張っている人たちとも作品撮りや会場作りができたのではないかと考えております。
まずは小さな一歩かもしれませんが、一人一人の自己実現を果たしていくことが希望を持てる世界になるために必要だと考えております。
私は本当に幸せ者で、辛い時もあったかもしれませんが、それ以上にいい人や幸運に恵まれて今回の個展の前日に無事30歳を迎えることができました。
まだまだ若輩者で、できることなんて限られているかもしれません。
それでも、今までの恩を返していけるように、これからも頑張りますので今後も応援していただけたらと思います。
最後の作品解説です。
タイトル「私が服を作り、写真を撮る理由」
友人夫婦を撮影させていただいた時の写真です。
花嫁とは小学生の頃からの友達で、
ドレス制作やスタイリングも担当させていただきました。
彼女は小学生の頃の私が作った拙い作品も喜び、褒めてくれた人です。
『いつか友だちの為にウェディングドレスを作りたい』
子どもの頃、将来は服作りにかかわる職業に就きたい
と思ったころからの夢の1つでした。
服飾系の専門学校に通い、技術を身につけ
その夢を叶えられるようになった今を幸せに思います。
学校で毎日のように会っていた友達も、進学や就職や結婚を機に
ほとんど会えなくなってしまいました。
大切な人の為に時間をかけて作ったドレスも、袖を通すのは1日だけ
人生のほんのわずかな時間です。
過ぎた日々に戻ることは無いですが、写真に収めた煌めくような一瞬は
彼ら夫婦の元で思い出としてずっと残すことができます。
着た人が幸せになるような服を
その気持ちをいつでも思い出せるような写真を
これからも、作り撮り続けたいと思います。
大川 由貴